見え方のグラデーションを趣向。 - 奥野崇 建築設計事務所の施工実例
施主様のこだわり
田園風景が広がり、南に石鎚山を望む敷地において、奥野さんは「のびやかでありながら、ほどよい包まれ感のある住まい」をつくることを目指した。隠し框を用いた存在しないかのようなガラス戸、室内に落ち着きをもたらす腰桟付きの網戸。透けて見える特殊なこよりを上部にのみ貼り込んだ障子は、閉じていても上部に石鎚の山並みが見える趣向だ。壁の中に格納されたそれらによって、一つの開口部でありながらいくつもの見え方と、距離感をつくりだせる。「『見える』と『見えない』の間にあるグラデーションを愉しむことができる」と奥野さん。建物内はちょうど良い大きさの空間が、斜めにずれながら続いていく構成。「落ち着くという身体的感覚をよりどころに、それでいて抜け感をつくった」という。視線は奥へ奥へと続き、遠く山並みへと届く。安心できる“包まれ感”と、外とつながる“のびやかさ”が絶妙である。