施主様のこだわり

　70代の施主夫妻にとって、思い入れのある築70年の建物。愛着は捨てきれないが、日々の暮らしにはさまざまな不便が生じていた。そこで外観は最小限の修復工事にとどめ、内部空間は間取りを含めたドラスティックなリノベーションを行った。仕上がりを左右したのは、村上さんの目利きの力。古い建物であるが故に、実際に現場で残せる箇所、補修が必要な箇所、取り替える箇所を見極めつつ、間取りなどの判断が行われた。「必ずしも、バリアフリーが安全ではない」というのが、村上さんの持論。年齢を重ねると小さな段差で生活に支障が出ることを知った上で、あえて高さを上げるべきところは上げ、下げるべきところは下げ、段差を意識しながら安全に生活できるような工夫がなされた。「図面ありき」ではなく「現場ありき」で行われた施工。匠の勘と技術を余すところなく発揮したリノベーションの好例となった。